最後の3日間(5)
私は自宅に戻り、前日から兄に開始された点滴についてネットで調べ、シャワーを浴び、少し眠ることにした。
午前10時26分。携帯が鳴った。父からだった。
すっかり深い眠りについていた私は飛び起きて、電話を耳にあてた。
長男が泣きながら兄の名前を叫ぶ声が聞こえた。
必死で、必死で車を運転した。お兄ちゃんは死なないと思った。お兄ちゃんの笑う顔を絶対にまた見るんだと思っていた。
病室に入る。父が〝ごめん、だめだった。逝ってしまった〟と兄のベッドの横にひざまずき泣いていた。
兄に私は叫んだ。でも叫んでも叫んでも、兄は目を開けてくれなかった。
みんなが兄のベッドのまわりにひざまずき、兄の体をただひたすらさすっていた。
〝がんばったな、よくがんばったな。えらかったよ〟と言いながら。
10時35分。兄は逝ってしまった。
私が自宅に戻ってからも兄の状態は変わりなかったらしい。ただ痰がつまるので看護士に吸引をお願いし、その吸引の時に状態が急変したらしい。兄は苦しむことなく眠りについた。ほんの数分の出来事だった。
長男が〝俺が呼びかけると、あいつ反応するんだ。だから何回も呼び続けたんだ。だって呼びかけると反応するから...〟と何度も言っていた。
私のお兄ちゃんが逝ってしまった。私の大好きなお兄ちゃんが逝ってしまった。

